多様化していく葬儀の世界において、近年よく注目されるようになったのが「家族葬」です。
これを第一の選択肢とする人も珍しくないほど、広まった葬儀のかたちです。
今回は、この「家族葬」の定義とやり方、そして家族葬ならではの特徴について解説していきます。
目次
家族葬とは?意味や定義を解説
家族葬をごく簡単にいうのであれば、「家族や親族、極めて親しい友人だけを招いて行う葬儀」です。
一般葬などの親族以外の弔問も受け付けて行う葬儀に比べると小規模な葬儀になることが多く、ここ20年近くの間で浸透していった葬儀のかたちだといえます。
他の葬儀との違いは
「家族葬」と一般葬は大きく異なります。
「葬儀の内容」だけでなく、「家族葬と混同しやすい言葉」との違いにも注目して紹介します。
家族葬と友人葬はどう違う?
親しい人(近親者)のみで葬儀を行うという点では「家族葬」と「友人葬」は非常に似ています。
ですが、明確とはいかないものの2つは区別することが出来ます。
「友人葬」は、たしかに「家族や親族だけを招いて行うもの」という意味で使われることもありますが、どちらかというと「特定の宗教(創価学会)の葬儀」の意味で使うことが多いものです。
- 家族葬=家族や親族、極めて親しい友人だけを招いて行う。
- 友人葬=近親者と他の学会員、近所の人の弔問も受け入れる。
上記のように区分できます。
もっともこのあたりは、葬儀会社や個々人によって違いもあるので、葬儀の際に関係者に確認をすると間違いないでしょう。
密葬とはどう違う?
「密葬」もまた、「家族葬」と混同されて使われます。
確かに、故人と親しい人や近い親戚だけを招いて行うもので、多くのケースでは小規模な葬儀となる。という点は双方同じですね。
ただ、葬儀会社や葬儀関係のサイトによっては、「密葬とは、大規模な葬儀(社葬など)を行う前に、親しい家族や友人だけで行う葬儀。大規模な葬儀に先駆けて行うもの」という意味で説明されています。
また密葬に、「〇人までなら密葬、それ以上ならば密葬ではない」という規模による明確な定義は無いので、300人を超える場合でも「密葬」と呼ばれることもあります。
上記を踏まえると、家族葬と密葬は似て非なるものだと分かります。
解釈の仕方が複数あるため難しく感じますが、もちろんどの解釈も間違いではありませんし、逆にどれが正しいということもありません。
ただ、「自分は、密葬=家族葬的なものをイメージしていた。しかし葬儀会社の方は、社葬に先駆けて行う葬儀のことを想定していたようだ」ということになれば、打ち合わせの段階で混乱が生じかねません。
そのため、実際に打ち合わせをする場合は、このあたりの解釈を明確にしておくとよいでしょう。
一日葬及び火葬式との違い
「家族葬」と「一日葬」「火葬式(直葬)」の違いについても見ていきましょう。
これらは「小規模な葬儀(家族葬の場合は例外あり)になる」という点では同じですが、葬儀のスケジュールが大きく異なります。
一日葬の場合、通夜を行わず葬式・告別式だけを行ってお見送りをします。
多くは宗教的儀式を伴いますが、通常2日間にわけて行われる葬送儀礼のうちの通夜が省略されるのです。
火葬式の場合はさらに簡略化され、通夜も葬式・告別式も行わずに火葬場でお別れをするだけです。
火葬式では宗教的儀式を伴わないことが多く、「家族しか招けない」という特段のくくりが無い点は一日葬も火葬式もありません。
一日葬や火葬式でも、ほかの弔問客を受け入れることができます。
対して「家族葬」の場合は、特段の記載がない限り通夜も葬式・告別式も含んだプランで展開され、故人や家族が声を掛けた人しか参加しないのが基本です。
ただ、このような違いはあるものの、実際には「一日葬や直葬の場合において、家族葬以外の形態をとることはない。また、大規模な葬儀にできないわけではないが、いずれの式でも、ほぼ必ず小規模な葬儀になる」という特徴はあります。
「家族葬であり、通夜も葬式・告別式も行う」とする葬送儀礼は非常に多いのですが、「一日葬(直葬)でありながら、家族葬ではない」とする葬送儀礼はとても珍しいものです。
つまり実際の現場においては、「家族葬のプランのなかに、『通夜も葬式・告別式も行う』とするプランと、『一日葬とする』というプランと、『火葬式にする』とする選択肢がある」というかたちで運営されることが多いです。
これは、「家族葬をする目的」を、「小規模な葬儀にすること」に置く人が多いことにも関係しています。
家族葬は非常にコンパクトな葬儀(になることが多い)ですが、一日葬や火葬式はそのコンパクトにした家族葬をさらに小規模にまとめる葬儀の形態だからです。
もっとも、このあたりの「違い」はかなり自由に調整でき、原則・実際の運営では上のようなかたちをとるケースが多いものの、
「故人の意向により一日葬とするが、家族葬とはしない。ほかの弔問客を受け入れる」
「家族葬にするが、最後の親孝行だと思っているので華やかに送りたい。祭壇などにもお金をかけたい」
などのようなやり方をとることもできます。
このあたりは、故人やご家族の意向によって大きく左右されるものです。
なぜなら葬儀において、「このような形が一般的である」はありますが、「誰もがこのような形をとる」という明確な決まりはないからです。
ただ、特段の希望があるのならば、事前に希望をとりまとめておくとよいでしょう。
一般葬との違い
「家族葬と葬儀の違い」が取り上げられる際には、「一般葬」との違いに焦点があてられます。
家族葬にも一般葬にもさまざまなやり方がありますが、本章ではごく基本的な違いについて紹介します。
1.訃報を告げる範囲
家族葬の場合は、原則として家族が声を掛けた人だけが弔問に訪れるので、一般の弔問客は受け入れないのが普通です。
この弔問客についてが、家族葬と一般葬の一番大きな違いです。
一般葬においては「訃報」というかたちで広く葬儀のことを告知し、会場や日時などについてもお知らせします。
会社や地域の人にお知らせし、新聞などに載せることもありますね。
しかし家族葬の場合は、葬儀に参列してほしい人だけに会場や日時を伝えます。
家族葬の場合でも、会社や学校に「故人が亡くなったこと」を告げることはありますが、この場合忌引き休暇などに関わるからという面が大きく、弔問を呼びかけるものではありません。
そのため、会社や学校に告げる訃報には、日時や会場が記されていません。
逆にいえば、この「日時や会場が記されているかどうか」は、家族葬であるかどうかの判断基準ともなります。
2.呼ぶ範囲・呼ぶ人数
前項とも関わってくるのですが、家族葬の場合は基本的には家族や親族、あるいはとても親しかった友人だけで行われるのが一般的で、一般の弔問客は受け入れません。
ただ、「家族葬」といっても、呼ぶ範囲はさまざまです。
家族葬の場合は一般的に非常に小規模なものとなりますが、5人程度以下の参加者に留まることもありますし、50人以上の参加者となることもあります。
「一般葬よりも集まる人は少ない傾向にあるが、故人やご家族の意向によって人数は異なる」と考えておくべきでしょう。
なお、家族葬に呼ばれた場合は、「あなたが私や故人と親しかった。だから来てほしい」という感情が強く込められています。
そのため、どうしても足を運べない特段の事情(入院中であるとか、外国に出張中であるとか)がない限りは参加するようにしましょう。
3.不祝儀や供物・供花の扱い
一般葬の場合は、基本的に不祝儀をお渡しすることになります。
しかし家族葬の場合は規模が小さく、「内々での葬儀」という意味合いを持つため不祝儀を受け取らないケースもよく見られます。
訃報に「不祝儀などはご辞退申し上げます」と記されているのならばそれに従うようにしてください。
書かれていない場合は一応持っていき、ご家族に渡す意思をみせます。
そこで断られれば下げるようにします。
そして供物・供花は、一般葬の場合でも、贈ってよいかどうかを確認してから出さなければならないものです。
家族葬においては会場が狭いことも多く、特にきちんと確認をしなければなりません。
この確認は、基本的には葬儀会場(葬儀会社)に対して行い、心痛のご家族には問い合わせません。
しかし「親戚関係であるし、今までの葬儀でもそのようにしてきた」という場合は、ご家族に直接問い合わせても構わないとされることもあります。
くもつ・きょうか。
供花は「くげ」とも読む。会場などに飾られるお供えや花のこと。
現在はかご盛りのかたちにされていることが多い
4.基本的に一般葬よりも規模が小さい
葬儀の規模やかたちにはさまざまな種類・やり方・考え方があるため、「これが正解」といえるものはそれほど多くはありません。
家族葬と一般葬の場合もそうです。
ただ、「一般葬よりも大規模な家族葬」もないわけではありませんが、一般的に、家族葬は一般葬に比べると小規模なかたちになることが多いです。
祭壇も小さいものが選ばれ、会場の広さも狭くなります。
一般葬とは異なり参加者の人数が読みやすいため、広い会場を借りる必要がないためです。
また、宗教者の呼ぶ人数も少なくなるため(葬儀にもよりますが、大規模な葬儀の場合は宗教者の数も多くなる傾向にあります)、お布施などの費用も軽減されます。
5.スケジュールが簡略化しやすい
これもあくまで「傾向」なのですが、家族葬の場合は葬送儀礼のスケジュールが簡略化される傾向にあります。
本章まででも少し触れましたが一般葬の場合、基本的には「お通夜→通夜振る舞い→翌日葬式・告別式→出棺→火葬→繰り上げ初七日法要→精進落とし→解散」となることが多いです。
対して家族葬の場合、
- お通夜~通夜振る舞いが省略されて一日葬になることがある
- お通夜~通夜~葬式・告別式も省略され、火葬式(直葬)になることがある
- 精進落としも省略されるケースも多い
などの特徴があります。
もちろん家族葬でも一般葬と同じような流れをとることも非常に多いのですが、「簡略化されたスケジュール組にしやすい」というのは家族葬の大きな特徴です。
6.会場として自宅も選びやすくなる
現在の住宅事情では、一般葬を「自宅」で行うことは非常に難しいです。
昔のように仏間が広くとられており延床面積も広い家ならば別ですが、そうではない場合、自宅にほかの弔問客も招いて葬儀を行うことは不可能といっても過言ではありません。
しかし家族葬の場合は参加する人数が少ないことが多いため、「自宅」もまた葬儀会場の選択肢としてあがってきます。
「故人が自宅から見送られることを強く希望していた」という場合は、その願いを叶えるために家族葬を選択してもよいでしょう。
ただ、葬儀会場は「葬儀を行うこと」に特化した会場であるため、非常に使いやすく整えられています。
また、自宅を葬儀会場とする場合は掃除や片付けなどを行わなければならないため、手間もかかります。
金額面に関しても、「葬儀会場を使うよりも自宅を使った方が確実に安くなる」とまでは言い切れません。
そして、「家族葬だからオリジナリティ溢れる葬儀ができる」「一般葬とは違うかたちで見送れる」とも言えません。
オリジナリティなどに関しては、「家族葬か一般葬か」というよりは、「どのようなプランを希望するか」「どのような葬儀会社を選ぶか」によって左右されるところが非常に大きいからです。
逆にいえば、「祭壇はこのようにしてほしい」などのように明確な希望があるのであれば、その希望を聞いてくれる葬儀会社をきちんと選び抜かなければならないということになります。
電話などで希望を伝え、それが実現可能かどうかを確認するようにしてください。
家族葬にする理由とは?
家族葬を行う理由は人により様々ですが、基本的には以下の4つに分けられるでしょう。
- 葬送儀礼にかかる時間を短縮したい
- 費用を抑えたい
- 気の置けない人だけでゆっくりと故人を送りたい
- 一般葬にしても弔問客の数が見込めない
葬送儀礼の時間を短縮したい
家族葬の場合、一般の弔問客を招かないため、通夜を省いたり、精進落としを省いたりとスケジュールを簡素化することが容易です。
これは「費用の軽減」「時間の短縮化」だけでなく、「体力や体調に配慮する」という意味も持っています。
喪主が高齢であったり病気を抱えたりしている場合、丸2日(実際には枕飾りなども行われるので3日~となることもある)を葬送儀礼に費やすのはかなりつらいものです。
葬儀の日程や規模が大きくなればなるほど打ち合わせにも時間がかかりやすくなります。
よって体力・気力などに不安がある場合は、それを軽減するために家族葬が選ばれることもあります。
費用を抑えたい
葬儀にかかる費用は、基本的には「規模」に比例します。
家族葬の場合は小規模になるのが基本ですから、その分かかる費用も安くなります。
ホールも小さいもので構いませんし、割かれる人員が少ないため人件費もあまりかかりません。
なお、この2を特に目的とする場合は、火葬式や一日葬を選択肢に入れるとよいでしょう。
気の置けない人だけで故人を送りたい
一般葬の場合、数多くの人が弔問にきます。
彼らの弔意は家族にとって大きな支えとなるものではありますが、挨拶などに時間と手間が取られるため、ゆっくりと故人とお別れの時間を過ごすことができない場合もあります。
特に弔問客が多くなりそうな場合は、「故人とゆっくりお別れがしたいので」と、家族葬のかたちをとることもあります。
なお、「家族は家族葬を希望しているが、立場上、家族葬だけで送るのは難しい」などの場合は、社葬やお別れ会が別の機会に設けられることもあります(あくまで一般的な話ではありますが、このようなケースでは特に「始めに行う家族葬」を「密葬」と呼ぶケースが多いように思われます)。
「親族間でもめ事があった」などの場合のときは、とても悲しい話ではありますが、葬儀というセンシティブな場面において、お互いの感情がぶつかり合うこともあります。
このようなことを避けられるという意味でも、家族葬には意義があります。
一般葬で弔問客の数が見込めない
高齢化社会となった現在、故人も喪主も非常に高齢になっているということは珍しくありません。
一般的に、故人・喪主が現役から退いた後だと弔問客の数は減る傾向にあります。
特に故人が90歳を超える年齢の場合、「故人の兄弟姉妹や親、友人」がすでに旅立っていることも多く、弔問客の数が見込めません。
よって、「弔問客の数が見込めないので、会場が少し寂しくなりそう」「もう年なので、周りに大々的に広める必要も、わざわざ来ていただく必要も感じない」ということで、家族葬が行われることもあります。
また、不祝儀は「弔意を示すためのもの」であるため、「費用」に換算することには抵抗感のある人も多いかと思われます。
しかし、「立派な一般葬にしたとしても弔問客はほとんど来ないと思われる。葬儀費用が生活費を圧迫する可能性もある」という実利的な面もあわせて考えて、家族葬を選ぶ人もいます。
家族葬にかかる時間は?
前章にて「家族葬にかかる時間は、一般葬に比べて短くなる」と説明しました。
本章では大体の所要時間の目安をみていきましょう。
なお、以下より特筆しない限り、「通夜も葬式・告別式も行う家族葬」を想定していると考えてください。
また、宗教は仏教としています。
一般的な家族葬の場合、宗教者のお迎えや読経、焼香などは一般葬と同じように行われます。
ただ、家族葬の場合は、弔辞の披露(もっとも、弔辞の披露は一般葬でも行われないケースが多いものです。社葬などでよく見られます)は行われないケースが多いと思われますし、弔電の紹介もそれほど多くの数はとりあげません。
また、焼香をする人数も少ないので、一般葬に比べると短くなる傾向があります。
通夜の場合も葬式・告別式の場合も、30分~1時間半程度が目安でしょう。
一般葬儀の場合は1時間~3時間ほどかかりますから、かなり短縮化されているということがわかります。
時間の幅は少し大きくとり、あくまで体感的なものであるため断言はできませんが、家族葬の場合は特に40分~1時間程度、一般葬儀の場合は1時間~2時間程度が多いでしょう。
火葬にかかる時間は変わりません。
これはご遺体をご遺骨にするために荼毘に伏すものですから、家族葬であってもそうではないものであっても、1時間~1時間半程度でかかります。
また、収骨にかかる時間もほとんど変わりません。
家族葬でも一般葬でも、「火葬場に行って火葬が終わるのを待つ人たち」というのは、「故人と極めて親しかった人や家族、親族」に限られるからです。
繰り上げ初七日や精進落としの時間もそれほど違いはないですが、家族葬の場合は精進落としなどを省略するケースもあります。
なお、一日葬の場合は、葬儀開始から終わるまでで6時間程度の時間を確保しておけばよいでしょう。
火葬式の場合は火葬場で簡単なお別れをするだけならば2時間程度で済むかもしれません。
(火葬式の場合は、精進落としの席を設けるかどうかで時間も変わってきます。)
家族葬にかかる費用は?
家族葬は、一般葬に比べてかなり費用を抑えることができます。
ただ、一口に「家族葬」といっても、葬儀会社のプランや規模、祭壇の飾り方などによって値段は異なるため、一概に「〇円」と断定は出来ません。
それでも相場を求めようとするのであれば、50万円~100万円程度になります。
宗教的儀式を伴う葬儀の場合はこの上にさらに「宗教者へのお布施」が乗せられます(明確な基準があるわけではありませんが、10万円~25万円ほどです)。
現在は「家族葬」を打ち出している葬儀会社が数多くあります。
ただ、それぞれの葬儀会社が掲げる「家族葬」のプラン内容にはかなり違いがあり、返礼品を含むところもあれば含まないところもあります。
また、基本的にはどこの葬儀会社も「故人をお連れするときの寝台車はプランに含まれている」としていますが、「20キロ以内とする」「50キロ以内とする」などの距離上限に違いが見られます。
これは家族葬に限ったことではありませんが、「何が含まれていて、何が含まれていないか」を比較検討して選んでいくことが重要なので、可能ならば生前にいくつかの会社に見積もりをとっておくことをおすすめします。
なお、「プランにいろいろ含まれているところがよい」というわけではありません。
なかにはそのご家族にとっては無用なものが入っていることもあります。
そして逆に、「プランはシンプルであればあるほどよい」というものでもありません。
後で必要になって追加をしなければならないこともあるからです。
この2つは「良しあし」で比べられるものではなく、「自分たちに必要なものは何か、そしてそれはプランに含まれているかどうか、何によって費用に差が出ているのか」によって判断するべきです。
費用についてより詳しく知りたい人は、こちらの記事をご覧ください。
家族葬のやり方とマナー
本章では、家族葬に参加するときのマナーについて紹介します。
参列する?それとも参列しない?
家族葬において難しいのは、「そもそも出席をしてもよいのかどうか」の判断でしょう。
これを判断する基準となるのが、「訃報を受けた際に、詳しい情報を教えられたかどうか」です。
家族葬を行う場合、喪家側は「参列してほしい人」には直接打診をすることが多いと思われます。
「葬儀」は冠婚葬祭のなかでも非常に優先度が高いものですから、声を掛けられたのなら参加しましょう。
また、「家族葬につき、ご参列をご遠慮願いたい」とあった場合などは「行かない方がよい」とだれもが判断できるでしょう。
問題は、「亡くなったことは知ったけれども、葬儀会場などの案内がない」という場合です。
このようなケースではかなり迷うことになるかと思いますが、基本的には参加しない方が無難です。
特に、自分の立場が「会社関係の相手であり、事務方である」などの場合は、忌引きなどのこともあり連絡をしてきていると考える方がよいでしょう。
不祝儀について
不祝儀は、「受け付けない」としている場合もあります。
しかしそのようなご意向が示されていない場合は、持って行った方が安全です。
相手の宗教に合わせた表書きをした不祝儀(双銀もしくは黒白の結び切りがよく使われる)を、紺色などの袱紗(ふくさ)に包んで持っていきます。
赤色やピンクの袱紗はマナー違反なので、新しく袱紗を買い求めるのであれば、紫色のものを選んでください。(慶弔どちらの場合でも使える色のため)
相手の宗教・宗派が分からない場合は、「御霊前」とすると、どの宗教・宗派でも使えるため良いでしょう。
厳密にいえば仏教の一部の宗派では使わない言い回しですが、取り立てて問題にされることはないと思われます。
なお、持って行っても、「受け取りません」とされたのならば、無理に押し付けることは避け、持ち帰るようにしましょう。
言葉遣いや格好は一般葬に準じる
言葉遣いや格好は、一般葬に準じます。
重ね言葉や繰り返す言葉、死や苦しみに繋がる言葉は避け、生死を直接表す言葉も使わないようにします。
もちろん死因を尋ねるのはタブーです。
格好は、「自分がどの立場か」によって異なりますが、ブラックスーツや喪服を利用するのが一般的です。
ただ、「自分は家族の立場であり、かつ通夜までまだ時間がある。手伝いをすることになっている」などのような場合は、地味めの動きやすい服装をしていって通夜前に着替えれば問題ありません。
なお、それほど多い話ではありませんが、「故人は格式ばった葬儀が嫌いだと言っていた。だから、いつもの服で送りだしてほしい」などのような希望がご家族から出された場合は、それに従います。
家族葬のメリット
「家族葬にする理由」の項目でも取り上げましたが、改めて家族葬のメリットについて紹介します。
コンパクトなので費用が安い
特殊な形態の家族葬でもない限り、家族葬は一般葬よりもこぢんまりとしたかたちとなります。
葬儀の規模は「費用」にほぼ直結するため、小規模に行える家族葬はそのまま「金銭面の負担の軽減」に繋がります。
この「費用面の負担の軽減」は非常に大きく、多くの人に家族葬が選ばれる理由となっています。
かかる時間を短縮できる
弔問客を迎え入れる一般葬と比べ、家族葬はかかる時間が短くて済みます。
これは単純に、「挨拶」にかける時間だけではありません。
受付をお願いすることになる一般葬の場合は、そのための連絡をする必要があります。
連絡先も多くなる傾向にありますし、焼香やお別れのときにも時間がかかります。
大規模な葬儀・弔問客を受け入れる葬儀の場合は決めなければならないことも多くなるため、打ち合わせの段階でも時間がとられるリスクが増えます。
どの弔電を読み上げるのか、受付は誰に頼むのか、返礼品はどうするのかなどなど、細かいところで「決めなければならないこと」がたくさん出てきます。
一つひとつを決めるためにかかる時間は短くても、ちりも積もれば山となります。
家族葬ならば、精進落としを省いたり一日葬にしたりといった工夫がしやすくなります。
しかし「一般の弔問客も迎え入れるが、一日葬にする」とすることは、なかなか難しいでしょう。
なぜなら葬式・告別式は昼間に行われるため、会社勤めの人などは参加しにくいのです。
このため、「時間の短縮を」と考えて一日葬を選択することも、一般葬の場合はあまり現実的ではありません。
家族葬ではかかる時間が少ないため、体力・精神面での負担も軽くできます。
特に、「持病がある」「体の自由が利かない」という家族がいる場合であれば、家族葬は有効な選択肢となりえます。
気心の知れた人のみでお見送りができる
人から記される弔意はありがたいものですが、その弔意に応えるべくご家族ががんばってしまいすぎる場合があります。
「失礼のないように」「お心に報いよう」とするあまり、故人とのお別れの時間を十分にとれなくなる可能性があるのです。
家族葬の場合は、前述したように決めることが少なく、故人とのお別れの時間を確保しやすい環境を作ることができます。
また、気心の知れた人だけで送ることができるため、精神的な緊張感も少なくて済みます。
家族葬のデメリット
家族葬にもデメリットはあります。
公平な視点で見るために、本章では家族葬のデメリットを解説します。
本当に費用を抑えたいなら直葬になる
家族葬は費用を抑えることのできる葬儀形態ではありますが、参列者が少ないために不祝儀もそれほど入ってきません。
もちろん、不祝儀とはあくまで「弔意を示すために参列者が持ってきてくださるもの」ですから、これの多寡を論じることはあまり望ましいことではありません。
ただ不祝儀は同時に「相互扶助」「葬儀にはお金がかかるため、少しずつ持ち寄ろう」という性質も持つものです。
そのため、「不祝儀を当て込んで葬儀をすること」はよいものではありませんが、「不祝儀を葬儀費用に当てる」と考えるのはごく自然なことなのですが、家族葬ではそれがなかなか難しくなります。
家族葬は、たしかに「葬儀費用を抑えるための選択肢」としては有用ですが、これを第一の目的とするのならば火葬式(直葬)を選ぶなど別の方法があります。
葬儀を2日間に分けて行う場合でも、無宗教で行えば宗教者に支払うお礼を浮かせられるため葬儀費用は大きくカットできますし、「これくらいの予算でやってほしい」と最初に葬儀会社に相談をすれば、家族葬以外でも出来るだけその予算に合わせたプランを提供してもらえるようになっています。
このようなこともあり、「費用を抑えたいから、絶対に家族葬にしなければならない」「できるだけ費用を抑えたいのに、通夜や葬式・告別式を伴う家族葬にしなければならない」と思いこむ必要はありません。
「費用」の面を重視しても、ある程度フレキシブルな対応が可能なのです。
後々に手間と時間がかかる
家族葬の場合、故人や家族が親しくしていた人に声を掛けて葬送儀礼を行うことになります。
上でも述べましたが、呼ばれていない人は基本的には家族葬に参列することはできません。
ただ、「自分は家族葬には呼ばれなかったけれど、弔意は示したい」ということで、火葬などが終わった後に改めて家にまで弔問に来てくれる人もいます。
このお心は非常にうれしいものなのですが、葬儀とは異なり、彼らは多くの場合個別にやってきます。
そのため、そのために複数回スケジュールを調整しなければなりません。
また、「スケジュール組だけでなく、来てくださるたびに『大切な人が死んだこと』を突きつけられてつらくなる」という人もいるでしょう。
そして家族葬の場合、「不祝儀辞退、返礼品もお渡ししない」とするかたちも多く取られていますが、後日訪問してくださる人に対して同様の対応はとりにくいでしょう。
そのため、「改めて返礼品を用意しなければならない」状態に陥ることもあります。
また、弔問する側の立場から見ても、「ほかの人と一緒に手を合わせて終わりの葬儀よりも、自分でアポイトメントをとらない『後日の弔問』の方がハードルが高い。ご家族の気持ちもあるだろうし……」と悩むことになりかねません。
故人のために、だれかがわざわざ足を運んでくれて、弔意を示してくださるというのは家族にとってはとてもありがたいことです。
しかし一般葬ならば一度で済んだ「お別れ」が、弔問客にとっても家族にとっても負担になる可能性はあります。
人間関係のトラブル
家族葬のもっとも大きなリスクが、「人間関係がもめる原因になりかねない」ということでしょう。
家族葬は、基本的には家族が声を掛けた人だけが招かれて行われるため、「自分は故人と親しくしていたし、葬儀に行きたかったし行くつもりだったにも関わらず、呼ばれなかったために行けなかった」という人が出てくる可能性も十二分にあります。
この場合、たとえば「友人は一切招かなかった」などの明確な基準があれば、後日の弔問を受け入れることで感情のもつれを最小限に抑えることはできるでしょう。
ただ、「同じ姪っ子の立場だが、故人はAという姪っ子とは仲がよかった。しかしBとは折り合いが悪かった。故人の気持ちを尊重して、Aだけを呼ぶ」などのようにした場合は、今後の親族関係がこじれる可能性もあります。
さらに、「最後なのだから大きな葬儀にしたかった」「いろんな人に見送ってほしかったのに」と言い出す親戚が出てくる場合もあります。
葬儀の場で起きるこのような「人間関係のもつれ」は、それから10年20年と後を引く可能性もあるので、注意が必要です。
家族葬の体験談・口コミ・評判
あぁぁ完全に寝るタイミングを失った…😭おなかすいた…😭
ところで全然関係ないんだけど教えて…
友達の親(親本人とは親交はほぼない)に不幸があって、人づてにお通夜の日時を知ったあなた。「家族葬」と聞いたら…
— りさま∵ (@FwmyvRitukochan) April 14, 2019
最後のお見送りができたのは何よりです。
最後のお別れ、大事です。
最近、思うんです。家族葬とか…亡くなられて何ヶ月も経ってから人づてに知る。葬儀は、残された遺族のものではなく、亡くなられた方と、繋がりのある方との最後のお別れの場。せめて亡くなられた事くらい連絡して欲しい。って…— じょー (@Yasu_Joe) April 15, 2019
近所の方が亡くなったと町内会から通知が来てお世話にもなってた方なので弔問に伺いたいのだけど、告別式場が家族葬の会場で戸惑っている。家族だけで見送りたいということ? 単に小さな式場でしますってことなの……?
— hinakamo? (@cima_ni_hic) April 14, 2019
葬儀の風習は変えるのが難しいよね。
私は、両親が認知症になってから、家族で随分と話し合いました。会社経営していたので、普通にやったらたくさん来てくれる。でも、家族葬でと決めました。
親戚から非難されましたが、自分達の思いを通しました。縁が切れても仕方ないと。— 桜子 (@nakatasakurako) April 14, 2019
まとめ
家族葬とは、「家族が声を掛けた人だけで行う葬儀」を意味しています。
基本的に故人の家族や親族のみを中心として行いますが、故人や家族が親密にしていた友人などを招く場合もあります。
- 費用
- かかる時間
- 招かれる人
といった部分に、一般葬との違いがあります。
一般葬に比べて費用は安くなる傾向にあり、かかる時間も短く、気心の知れた人たちだけでお見送りができるので精神的な負担も少ないといえるでしょう。
高齢化社会になった今、「一般葬にしても弔問客が見込めず、寂しいから」などの理由で家族葬を選ぶ人もいます。
ただ、家族葬にもデメリットはあります。
家族葬に招かれなかった人が後日弔問に来ることも多いため、この度にスケジュール組みをしなければなりません。
また、「家族葬の場合は不祝儀不要・返礼品なしとしたが、後日来てくださる方に何もお渡ししないわけにはいかない」ということで、新たに返礼品を用意しなければならなくなることもあります。
「あの人には声を掛けていたのに、私には声を掛けてくれなかった」「どうせならいろんな人に送ってもらいたかったのに、家族が家族葬を選択したためそれができなかった。亡くなった○○がかわいそう」などのように考える人が出てくるリスクもあります。
家族葬は現在非常に多くの人に選ばれている葬儀形態です。
メリットとデメリットを理解したうえで家族葬を選ぶか、それともほかの葬儀形態にするかをしっかり考えましょう。
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