葬式・葬儀は、多くの人にとって戸惑いとともに迎えることになるものです。
大切な人を失った悲しみと動揺のさなかに向き合うことになるものですし、また慣れるものでもありません。
喪家側になった場合はもとより、参列者として参列する場合でもわからないことがいろいろあるでしょう。
ただ、葬式や葬儀のことを学んでおくことは、悔いのないお別れを行うことの手助けとなります。
本記事では、「葬式と葬儀の違い」「葬式・葬儀のルール」「葬式・葬儀の歴史」についてお話していきます。
目次
そもそも葬式とは?意味を解説
まず、そもそも葬式・葬儀とは何か?から解説していきましょう。
葬式と葬儀は古今東西いつでもどこでも見られるものです。
亡くなった人を送り出し、残された人たちがその死を受け入れられるようにするための一つとなる儀式をいいます。
葬式・葬儀には、「これが正解」という明確な正解はありません。
「マナーとしてこのようにした方がよい」「一般的にはこのようにされる」「特に断りがないのであればこのようにする」などの基準はありますが、それぞれの葬儀・葬式によって異なりますし、また地域によっても差が見られます。
加えて現在は葬式・葬儀の形も多様化していっています。
日本では仏教式の葬式・葬儀が多く見られますが、神式やキリスト教やイスラム教、また宗教的儀式を伴わない葬式・葬儀も行われています。
葬式と葬儀との違いは?
さて、当たり前に使われている「葬式」と「葬儀」ですが、この2つの使い分けについて考えたことのある人もいるかもしれません。
また、葬式・葬儀関係の記事やサイトを見ていると、この2つはまったく違うものだとされていることもあるでしょう。
この2つの違いについて考えていきます。
「葬式」という単語を国語辞典でひくと、
「死者をほうむる儀式。とむらい。葬儀。葬礼。「-を出す」
引用「角川最新国語辞典 山田俊夫 石綿敏雄編(1987年初版)P591」
となっています。
対して「葬儀」は
「死者をほうむる儀式。葬式。葬礼。
引用「角川最新国語辞典 山田俊夫 石綿敏雄編(1987年初版)P588」
ここからも分かるように、日本語として考える場合は「葬式」と「葬儀」は区別されていません。
そのためか「葬式」「葬儀」に関しては、専門サイト間や葬儀会社間でも使い分け方がまったく異なってきます。
- 1.「葬式」といえば通夜・告別式(・火葬)の一式のことを指し、「葬儀」といえば告別式のことを指す
- 2.「葬式」は通夜の翌日に行われる式のことを指し、「葬儀」は葬送儀礼全般(通夜から火葬までを含む)を指す
- 3.「葬式」は宗教的儀式を含む儀礼のことを指し、告別式は宗教的儀式を含まない。「葬儀」は葬送儀礼全般を指す
などです。
また、これ自体も一例であり、「葬式も葬儀も特別使い分けをしていない」というところもあります。
さらにいえば、「告別式」と「葬儀」「葬式」の使い分け方もあいまいであるため、なかなか「これが正解である」とは言い切れないのが現状です。
このため、それぞれのサイトや葬儀会社が「うちはこのようにして使い分けています」と提示して、それに沿って記事や説明を行っています。
もちろんそのどれかが正しく、そのどれかが間違っているというものではありません。
また、実際の現場においては、この2つを厳密に区別して語る必要性は極めて薄いといえます。
このことを踏まえたうえで、本記事では上記の1に従って解説していきます。
葬式・葬儀の歴史
「故人を弔いたい」「残された家族を労わりたい」という気持ちは、はるか昔から息づいているものです。
このような願いの元、葬式・葬儀は行われてきました。
葬式・葬儀の歴史をさかのぼると、ネアンデルタール人の墓にまで行きつくといわれています。
その墓に花が供えられていた痕跡があることから、このときからすでに「花をもって故人を送ること」がなされていたとされています。
日本では石器時代からお墓が見られたと考えられています。
私たちがよく知る仏教式の葬式・葬儀は聖徳太子の葬送から始まったといわれています。
その後葬式・葬儀は、仏式と神式の葬式・葬儀が混ざったり、霊柩車が誕生したり、互助会が登場したり葬儀会社の利用が盛んになったりとさまざまな変化を遂げていくことなります。
また、現在では家族葬や宗教観に囚われない葬式・葬儀もよく見られるようになりました。
しかしどの時代であっても、葬式・葬儀によせる残された人間の心は変わりません。
故人を愛しく思い、死後の安寧を祈り、弔いたいという気持ちで、人は葬式・葬儀を行うのです。
葬式・葬儀の作法やルール
葬式・葬儀における作法やルールは、特段の記載がない限りは以下のように決められています。
- 服装の作法を守る
- 持ち物に気を付ける
- 宗教的儀式や宗教観を理解する
- その場に相応しい言葉を選ぶ
「服装」は、通夜と葬儀の日では異なります。
通夜の場合は「取り急ぎ駆けつけました」という意味があるため、ダークトーンのスーツで参加します。
対して葬儀の日はブラックスーツ(女性の場合はアンサンブルやワンピースでもよい)で参列します。
男性も女性も、靴は黒の革靴、靴下やストッキングは黒が望ましいでしょう。
なお、通夜の場合のみ肌色のストッキングでも良いとされています。
持ち物は、金具がついていない黒の鞄を用意します。
不祝儀は袱紗(ふくさ。紫色のものが慶弔どちらでも使えて便利)に包んで持っていきます。
不祝儀の表書きは宗教によって異なりますが、わからなければ「御霊前」と書きましょう。
「御霊前」という書き方は、どの宗教・どの宗派であっても使えます。
厳密にいえば仏教の一部の宗派では使わない表現ではありますが、そこまで問われることはありません。
葬式・葬儀は宗教と密接に関係しているものです。
仏式では焼香、神式では玉串奉奠、キリスト教では献花がよく見られます。
このときに求められるのは、「故人(喪家)側の宗教に合わせた葬送儀礼で見送る姿勢」です。
仏式のお見送りには数珠がつきものですが、キリスト教の葬儀に参列する場合は持って行かないなどの気遣いをしたいものです。
また、言動は葬式・葬儀の場に相応しい表現や形容をするよう心がけましょう。
「またまた」のような重ね言葉、「再三」のような重なることを意識する言葉は避けます。
「死ぬ」「生きているとき」のような生死を直接的に表現する言葉も使わないようにします。
また、死因などについて探るのも失礼です。
加えて、「使ってしまいがちだが、相手の宗教によっては使用が相応しくない言葉」があるということも覚えておきたいものです。
たとえば、「ご冥福をお祈りする」は仏教用語であり、神式やキリスト教の葬儀では使いません。
本章では以上でマナーについての解説を終わりますが、葬儀マナーについてさらに詳しく知りたいという方は、こちらの記事もご覧ください。
葬式・葬儀でやることを方法とともに紹介
葬式・葬儀で行うべきことはたくさんあります。
喪家側と参列者側で分けて紹介していきます。
なおこの流れは、
- 亡くなったのは病院
- 一度自宅に安置してから、翌日に通夜を葬儀会館で行う
- 初七日法要も精進落としも同会場で行う
- 仏式の葬儀であり、一日葬ではなく2日間にわたって行う葬式である
- 一般参列者も招く
以上の条件下での流れです。
実際には、葬儀のかたちや喪家側の希望、宗教によって多少異なります。
通夜や葬儀の日の詳しい内容については割愛しますが、以下から簡単にまとめて解説します。
喪家側
まずは喪家側が行うことを、順序立てて簡単に解説します。
1.葬儀会社に連絡します。菩提寺にも連絡します。
2.葬儀会社が駆けつけてくれるので、その車で故人を自宅にお連れします。
3.自宅に布団を敷き、故人を安置します。枕飾り(こぢんまりとした祭壇)が作られます。必要な場合は枕経(まくらきょう・まくらぎょう。故人の枕元で読まれるお経)をあげてもらいます。
4.通夜や葬儀についての打ち合わせをします。
5.翌日、納棺を行います。
6.棺にお入りいただいた故人を葬儀会館にお連れします。
7.通夜が開始されます。
8.通夜が終わった後通夜振る舞いを行います。参列した方々を招き、飲食物を振る舞います。
9.翌日、葬儀が行われます。
10.出棺します。出棺のときは、家族は霊柩車もしくはマイクロバス、あるいは自家用車に乗ります。
11.火葬場に向かいます。
12.火葬場で最後のお別れをします。
13.火葬が終わるのを待ちます。待合室で軽食をとって待つのが一般的です。
14.火葬が終わったら収骨をします。
15.火葬場から葬儀会館に戻ります。
16.葬儀会館に戻ったら繰り上げ初七日法要を行います。
17.精進落としの食事をとります。
18.解散です。
現在は葬儀会社を通して葬儀の手配をするのが一般的です。
書類の提出や祭壇の準備などはほぼすべて葬儀会社が行ってくれるので、喪家側が行うことは限られてきます。
1.葬儀のかたちの希望を決める
どの宗教で行うか、家族葬か一般葬かなどです。
葬儀の規模も決めることになりますが、現在は故人の年齢や喪主の立場を考えて葬儀会社から妥当と思われるプランが提示されるケースが圧倒的多数なので心配しなくて構いません。
2.各所への連絡
親戚や友人への連絡です。
また、菩提寺への連絡も喪主が行う方がよいかもしれません。
菩提寺がわからない、手配ができない場合は葬儀会社に相談してください。
3.日取りを決める
ここでは「亡くなった日の翌日に通夜を行う」としましたが、実際にはスケジュール調整をして決めていくことになります。
菩提寺の住職や火葬場の休み(正月など)も合わせて打ち合わせをしていく必要があります。
4.精進落としの参加人数と席次決め
精進落としでは仕出し弁当もしくは懐石料理が用意されるのが一般的です。
そのため、参加人数と席次を決めなければなりません。
これも喪家側が行います。
5.返礼品などを決める
返礼品や食事のプランも決めていきます。
ただ、「まったく0の状態から決めて手配しなければならない」ということはありません。
特にこだわりがなければ、葬儀会社の出してきたパンフレットのなかから適当な価格帯のものを選ぶようにすればよいでしょう。
なお、葬式の料理に関しては魚や肉を入れるかどうかは地域差が非常に大きいので、「入れないで」「入れて」という明確な希望があるのならばしっかり伝えてください。
6.遺影の用意
アルバムなどから遺影にする写真を用意します。
現在は「その人らしさ」が感じられる写真を選ぶのが一般的です。
基本的には、「家族でなければできないこと」のみを家族がやればよいと考えておいて構いません。
参列者側
訃報を受けたとき、参列者側はどうすればよいのでしょうか。
喪家側の説明と同じく、以下からまとめて解説します。
1.訃報を受け取ります。
2.葬儀のかたちや日取りを聞き書き留めます。また、自分がほかの人に伝えなければならない立場ならば、その情報を共有します。
3.着て行く服を準備します。
4.不祝儀袋の用意をします。相手の宗教に合わせた不祝儀袋とします。
5.通夜もしくは葬儀に参列します。
6.通夜の場合は通夜振る舞いに、葬儀の際は出棺のお見送りに参加します。
一般の参列者側として出る場合は、行うべきことは決して多くはありません。
ただ、受付を頼まれたり弔辞を頼まれたりしたケースではご家族の希望に沿って動く必要があります。
葬式・葬儀での挨拶の仕方
葬式・葬儀では何度か「挨拶」をする場面があります。
その際の挨拶の仕方を紹介します。
喪主側
喪主は、通夜と葬儀の際に「喪主挨拶」として挨拶をする役目も担います。
この際、
- 参列してくれたことへのお礼
- 生前に世話になったことへのお礼
- 故人が旅立った後でも、残された家族を指導していってほしいこと
以上を述べるようにします。
またこの際に、故人の生前のエピソードなどを差し挟むとよりよいでしょう。
参列者側
参列者側から喪家側に対して挨拶をする場合は、簡潔に行うことが重要です。
前述したように、重ね言葉や不幸が重なることを連想させる言葉を避け、弔意を伝えましょう。
また、残されたご家族のご体調やご心情を気遣う言葉をかけるのもよいでしょう。
ただし、「早く元気になってね」などの言葉は避けるべきです。
例えば、
「ご冥福をお祈り申し上げます(仏教限定)」
「故人様のお旅立ちが安らかであるようにお祈り申し上げます」
「生前は大変お世話になりました。ご家族様もお心とお体にお気をつけてお過ごしください」
などです。
まとめ
葬式・葬儀には長い歴史があり、言葉や服装に関するマナーがあり、やるべきことがあります。
挨拶の面で悩んだり、言葉の使い分けで悩んだりする人も多いことでしょう。
しかし現在は葬儀会社が葬儀をよくサポートしてくれますし、「自分たちの望む葬式・葬儀」を挙げられる環境も整ってきています。
また、何よりも重要なのは、「大切な人を弔いたいという気持ち」「故人や残されたご家族を御慰めしたいと願う気持ち」です。
マナーは、そのような気持ちをよりスムーズに伝えるための方法だと考えましょう。
皆さん一人ひとりが思い描く葬式・葬儀を執り行うために、終活ネットが参考になると幸いです。
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